“合気道は護身術になるから女性に向いている”
このようなことを一度くらいは耳にしたことがありませんか?
現に警視庁の婦警さんたちは、養神館の合気道(*)を必修科目として受講されているそうです。
(*) 養神館合気道:植芝盛平開祖の内弟子の一人、塩田剛三先生が創始した会派。
合気道歴4年(合気会二級)の自分が、この疑問について今の経験から感じたことを書いてみようと思います。
自分が有段者になった時にこの文章を読んでどう感じるのかとても楽しみです。
二級の自分が護身として合気道を発動できるのはどのようなシチュエーションだろう?
- 相手が自分と同じくらいの体格かそれ以下。
- 相手が打撃系の武道経験者でない。
- 相手が一人だけである。
- 電車内や飲み屋などの狭い空間。
- 双方が至近距離で且つ、相手の初動が静止状態から始まるケース。
- むなぐらを相手につかまれた時。
- 「ちょっと来いよ!」と腕を引っ張られた時。
- 相手が手持ちのカバンや傘などで自分を打とうとしてきたとき。
ひとつずつ解説をしてみたいと思います。
相手が自分より大きければ大きいほど、それは力の差になって表れます。
本来、合気道は相手の力のベクトル(方向と大きさ)を利用して相手を制するので、相手が力を入れれば入れるほどこちらが有利になるのです。
しかし、合気道歴4年の自分が瞬時に相手の力のベクトルを感知し、相手の一番弱い方向に転換させる技術はありません。
外人さんのようにごつい人にいきなりつかまれたら、ベクトルを感じる前に抑え込まれてしまうでしょう。
次に打撃系の武道経験者。(柔道も入りますね)
合気道は相手と繋がらなければ何もしません。
つまり相手の攻撃に対し、致命傷を負わないよう当て身を入れたり、さばきをしながら、相手の懐に入り、相手と繋がる必要があります。
打撃系武道経験者や柔道家は攻めのスピードが速いですから、相手の懐に入る前に一撃を食らって終わってしまうでしょうね。
やはり自分のレベルでは一人を相手にするのが精いっぱいでしょう。
植芝盛平開祖の教えに「敵多勢我をかこみて攻むるとも一人の敵と思ひたたかえ」とあります。
残念ながら今の私にはまったく理解できませんが、有段者になると「多人数掛け」の稽古が出てきますので、その極意を学べることを楽しみにしています。
空間が限られたところ。
つまり、相手の初動が制限されるということは相手の動きを見極めやすいです。
広い空間では、打撃だけでもパンチに蹴り、上下左右を意識しなくてはいけませんし、はたまたタックルで強引に押し倒そうとしてくるかもしれません。
多様な攻撃を想定して反応することは今の自分には無理です。
静止した状態から相手が掴んでくるようなシチュエーション。
胸ぐらをつかまれたら二教、腕を掴まれたら呼吸投や四方投で対応できるかもしれません。
相手が手持ちの傘やカバンを振りかぶってきた場合、これは意外にチャンスがあると思います。
相手は振りかぶっている分、攻撃のスピードは遅くなり、かつ、カバンの出所だけに集中すればいいので見極めやすいです。
相手が振りかぶった瞬間に横面打ちさばきの応用ができるのではないかと思っています。
有段者になるとどう変化するだろう?
自分はあと二階級上がると初段になりますが、2年後取得を目指して稽古をしています。さらにその1年後に二段の審査資格を有します。
それでは今後3年の稽古によって二段に昇段した場合、前述のシチュエーションにどのような変化が表れるのかを考察してみたいと思います。
- 相手が自分と同じくらいの体格かそれ以下。
- 相手が打撃系の武道経験者でない。
- 相手が一人だけである。
- 電車内や飲み屋などの狭い空間。
- 双方が至近距離で且つ、相手の初動が静止状態から始まるケース。
- 広い空間で相手が自由に動ける状況でも問題ない。
- むなぐらを相手につかまれたとき。
- 「ちょっと来いよ!」と腕を引っ張られたとき。
- 相手が手持ちのカバンや傘などで自分を打とうとしてきたとき。
- 後ろから抱きつかれたり、首絞めされたり、腕を掴まれたとき。
- タックルなどで突進してくるとき。
新たに対応可能なシチュエーションを赤字で追加してみました。
もう一度整理します。
もし自分が合気道二段になったら、
相手が自分の体格と同じで、武道未経験者で、短刀や飛び道具などを持っていなければ、どのようなシチュエーションでも対応可能である。
しかし、もし相手との体格差が大きかったり、相手が武道経験者であったり、二人以上で来られた場合は、ほぼ対応は困難だろう。
いかがですか?
これはあくまでも自分にフォーカスしたものであって、これが合気道経験者一般に当てはまるものではありません。
大柄な人もいれば、小柄な人もいるし、毎日稽古をしている人もいれば、週1回の稽古の人もいるし、護身を目的に稽古をしている人もいれば、健康を目的に稽古をしている人もいます。
しかし、合気道をする人全員に備わっているものがあります。それは、
相手と対峙するときに自分を守る姿勢が取れます。
合気道は常に半身という姿勢で相手の攻撃を受けます。
ただぼぅーっと突っ立っていては、急所を打たれて大けがをしてしまいますが、半身で急所を守ることが可能です。
受け身が取れます。
相手に押されて後ろに倒れる場合でも、後ろ受け身を取って頭を守ることができます。
そもそもそのような境遇にあわないようになります。
合気道は相手と協調する心を鍛え、人と争わない心を養います。
したがって、些細なことで人とトラブルになることが減ります。
最後に。
現実社会の中でトラブルに巻き込まれるシチュエーション、特に女性などは電車内や帰り道での痴漢・ストーカー、飲み屋で酔っ払いに絡まれるなど、ある程度、人も場所も限定されるのではないでしょうか。こういったシチュエーションで合気道の技を使った護身はとても有効だと思います。
See you next year !!