長年、空手道を歩み続け、現役の師範が合気道の門をたたかれました。
そのような方が、合気道の門をくぐり、一から稽古を始められてどのように感じたのかを聞いてみました。
長年のくせがどうしても抜けない
空手は自分の拳で相手を倒す武道。
打ち込んだ時の衝撃に負けないよう、常に自分の拳を鍛え、力を込めてきたので、そのくせが合気道でも出てしまう。
拳を打ち込みたいという衝動が湧く
合気道は自分から攻めず、相手の攻める力を利用して制する武道と聞いていた。
しかし、実際に組んで稽古をすると、自分の正面突きを相手が受け止めた瞬間に、もう片方の拳を打ち込みたい衝動に駆られるそうです。
空手の場合、攻撃は一発で終わりではなく、次から次へと拳・蹴りを繰り出します。
突きを出しながら次の攻撃のことを考えいるので、当たったと感じた瞬間には、もう片方の拳や足が動き出しているそうです。
そのため、合気道の稽古でも、自分が出した正面突きを相手が受けた瞬間、どうしても次の攻撃をしたくなってしまうとのこと。
また、相手は隙だらけだから、稽古をしていても合気道とは本当にこんなものなのか?と疑問に思われていたそうです。
合気道では初心者と有段者が稽古をします。
つまり、受けた人の中にはまだまだ相手の力を利用する域に達していない人もいるでしょう。しかし、袴をはいた黒帯の人と組んでもそう感じることがほとんどだったとおっしゃっていました。
打ち込む衝動が初めて消えた衝撃
しかし、その中で唯一、自分が突いた拳を受け流され、打ち込みたいという衝動が消された経験をしたとのこと。それが84歳の私の合気道の先生だったそうです。
その方曰く、突いた!と思った瞬間、
暖簾に腕押しのようにそこには何もなくなっていた。
突いた拳の上には、先生のやわらかい指先が軽く乗せられていて、やさしく導かれるようにいつの間にか床に寝そべっていた。
そんな経験をしたそうです。
いつもであれば、空いた拳を打ち込みたい衝動に駆られるそうですが、最初に受けながされた時の力感が全くなかったので、そこを支点に次ぎの拳を打ち込むことができなかった。いや、むしろ打ち込みたいという衝動が消されてしまったそうです。
これが合気道なのか
その経験をされて、はじめて合気道の面白さ、奥深さを感じたそうです。
それ以来、先生と組んで力を抜きなさいと注意されるのだけど、長年空手で体に染みついたクセは容易に抜けることができないと笑っておっしゃっていました。
合気道は戦う心なからしむ
開祖は「合氣とは自己に打ち克ち、敵をして戦う心無からしむ」と言われています。
この言葉をどう解釈すればいいのかとても難しいです。
私の先生も武道の武とは『戈(ほこ)を止める』と書く。武道とは戦う心を消滅させることだと言われます。
もしかしたら、空手の師範が拳を打ち込む衝動を消されてしまった。とおっしゃった言葉の中にヒントがあるのかもしれません。
See you next !!