前回は『己を知る』と題して、リノベーション前の建物・土地の情報を取得したこと、自分がねん出できそうな費用を把握したことについて書いてみました。
今回は、リノベーションとは具体的にどんな工事をして、どのくらいの期間をかけて、どの程度の費用相場になるのかを、素人なりに私が取り組んだことをご紹介したいと思います。
我が家の場合、建物の質(快適性、安全性)すべてにおいて向上させることが目的だったので、当初からフルリノベーション(スケルトン工事)を想定していました。
しかし、フルリノベーション(スケルトン工事)といっても、建築の知識はゼロなので、一体、どんな作業が発生するのか全くわからなかったのです。
このままではプロである業者の提案に対し、吟味する術がないまま臨むことになってしまうので、少しでも事前に知識を得ておこうと思いました。
そこで、まず入手した書籍がこれです。
『積算資料 リフォーム編2017 ポケット版』
この書籍は業者の方も建材の単価を確認するために利用しているとかで、施工事例とその費用の詳細、各種建材(床材、断熱材など)のグレードとその単価が事細かく記載されています。
私も自分自身でいろいろとシミュレーションをする上で、バイブルとしてとても役にたった1冊です。
この書籍に関する詳細のブログを用意していますので、興味がある方はそちらを参照してください。
さて、具体的にどのような工事の種類があるのでしょうか?
わが家のリノベーションにおいて実施した工事をすべて列挙してみます。()の数字は実際に掛かった費用の金額です。
因みに我が家はハウスメーカー系の業者にお願いしたので、地元の工務店に頼むより費用は高いと思います。いろいろな理由を考慮した上で、それを承知で選びました。
仮設工事(53万円)
主に足場を組むための工事ですが、養生や引き渡し前の清掃も見積もりに含まれていました。リノベーションを何度も繰り返すとそのたびに費用が発生してしまうので、一回のリノベーションで済ませた方が費用を抑えることができます。
解体工事(110万円)
元を生かす部分があるため、解体も慎重に行う必要があり、建替えよりも手間がかかり、コストが上がる場合もあるそうです。
廃棄作業(105万円)
解体によって発生した廃棄物の処理費用です。
我が家の場合、スケルトンに近い解体となったので、かなりの費用が掛かってしまいました。それにしても100万円を超えるとは想定外でした。
基礎工事・左官工事(13万円)
基礎は基本的に現行の土台を使用しています。ヒビが入っている箇所の強化、玄関部分のタイルを新しく張替え箇所の工事費用になっています。
躯体工事(14万円)
我が家は2×4構造のため、大きな間取りの変更はできず、現行の壁面をそのまま利用しながら、若干の広さを変更する程度にとどまりました。そのため、躯体工事はほとんど掛かっていません。
屋根工事(135万円)
全取り替えではなく、上から新しい素材で覆うカバー工法になりました。
当初は全取り替えを考えていたのですが、カバー工法にくらべ、工事費がかなり高くなることがわかりました。カバー工法も今では軽い素材があり、それほど重くならず、メンテナンス性もいいということで、業者の提案に乗ることにしました。それでも100万円越えですから、高いですね。
雨どい交換工事(31万円)
地味に高いのが雨どいの交換です。屋根の周りから、外壁を通って地面まで取り付けてあるので、意外に距離が長いのです。今回のリフォームを機に、すべて新しいものに交換しました。
外壁工事(15万円)
外壁も現行をそのまま利用しているので費用はそれほど掛かっていません。ただし、サッシを全取り替えするにあたり、一部、サッシの大きさを変更したり、サッシの取り付け位置の変更・追加をしているため、その部分の外壁の調整が掛かっています。
塗装工事(96万円)
当初はサイティングを考えていましたが、工事費・材料費ともに割高になることがわかったので、現在の外壁と同じ、モルタルの塗り直しに変更しました。これまでの壁は凸凹した古い感じでしたが、素材と色(紺と白)を変えることで、モダンで綺麗な仕上がりになり、とても満足しています。
サイティングの方が若干メンテナンス性向は高いのですが、それほど大きく変わるわけでもなかったですし、外の見た目にはこだわっていなかったので、コストを下げる方向にシフトしました。
バルコニー工事(17万円)
バルコニーは目隠し部分の交換と、防水工事を行っています。当初は大きくしたかったのですが、建築基準法の関係でこれ以上前に張り出すことができませんでした。
開口工事(30万円)
外壁工事と同様、サッシを全取り替えするにあたり、一部、サッシの大きさを変更したり、サッシの取り付け位置の変更・追加をしているため、外壁に対し、開口をする工事費になります。既存のサッシ位置や大きさをそのまま利用する場合はこの費用は掛からないと思います。
間仕切工事(35万円)
私たちの寝室の窓からしかベランダに出られないので、ドアからパーティションを作って疑似廊下を作り、義理母や妹が出入りしてもプライベートを邪魔されないようにしました。普段は解放しておけば、一つの部屋として広く使用できるようにしました。
1階にもパーティションを入れ、玄関からの目隠しとし、解放するとリビング、キッチン、ダイニングをぐるっと走り回れる構造にしました。
2×4構造だと大規模な間取りの変更ができないため、間仕切りを工夫することで、新しい空間を作り出したり、快適性を求めるのに大いに役立ちました。
下地工事(床・内壁・天井)(58万円)
我が家はこれまで1Fの和室の畳以外、すべてカーペットで覆われていました。これを畳も含め、すべてをフローリングに張替えることにしました。また断熱材も性能のいいものに変えることにしました。そのための下地工事の費用になります。今回の最優先事項なので予算に関し、妥協することは考えていませんでした。
断熱工事(床・内壁・天井)(19万円)
断熱材を貼り合わせていく工事になります。いい素材の断熱材を使用しても、施工がまずかったり、一部でも貼り漏れがあると、その効果がなくなってしまうので、第三者の検査機関に頼んでチェックをしてもらうなど、最新の注意を払いました。
非常に良く施工してくれていましたが、それでも検査の結果、一部逆に張り付けているところが見つかったり、ロフトから天井に入るための開口扉や、床下に降りるための開口部分の裏側に断熱材を張るように指示してくれました。素人の私では絶対に指摘できない部分なので、お金を払ってでも第三者のプロにチェックしてもらってよかったと思っています。
床内装工事(67万円)
床はすべて張り替えました。1階のリビングはすべてブラックチェリーの無垢材、キッチン・ダイニング・トイレ・バスはタイル、2階は朝日ウッドテック社のシカモア(合板だが表面は無垢材を使用)。無垢材の場合、1枚1枚、色合いを見ながら、貼り合わせていくため、工事費用は高くなります。それでも無垢は仕上がり具合や足ざわりがたまらなくいいです。お金を掛けた甲斐がありました。
壁内装工事(89万円)
当初は珪藻土による塗り壁も考えたのですが、非常にコストが高くなるということで、白を基調としたクロスにしました。リビング、主寝室、、トイレ、洗面所の一部にエコカラットのタイルを使用しました。
天井内装工事(17万円)
子供部屋にロフトを新設したことで、天井の梁にも白いクロスを張ってもらいました。職人さんも梁のクロス貼りが一番難しかったそうです。しっかりとした職人技のおかげで、白い天井がとても綺麗で明るい部屋になりました。
その他内装工事(窓廻り、玄関)(5万円)
建具工事(18万円)
部屋の扉をすべて新しいものに交換しました。従来、引き戸式だったものをドアにしました。
収納工事(8万円)
キッチンに収納棚(開閉式)をひとつ造作してもらった費用になります。
階段工事(12万円)
階段は新しいシステム階段に取り換えをしてもらいましたので、その取り付け費用になります。
造作工事(80万円)
ダイニングテーブルはこれまで使っていたものをそのまま使用することにしましたが、チェアはすべて捨て、壁に固定させたカウンターベンチにしました。チェアがなくなったことで広く感じるようになりました。
リビングと主寝室に吊り式のシステム収納(Daiken Misel)を取り付けました。床から浮くことで掃除がしやすくなりました。
子供部屋の机と収納も1枚の長板を壁に固定させるだけで済ませました。新しい家で家具は全くなくなってしまいました。地震などで倒れる危険がゼロなので、そういう意味では安全な居住空間を造ることができたと思っています。
造作は家の空間をうまく利用できるのですが、工事費がとても高くなるので、極力最小限にしました。
キッチン工事(7万円)
Panasonicのラクシーナというシステムキッチンの設置費用です。
ユニットバス工事(12万円)
Lixilのアライズというユニットバスの設置費用です。
洗面所工事(2万円)
Panasonicのラシスという洗面台のセットを設置する費用です。工事費はとても安いのですが、ラシスは48万円でした。笑
洗面所は私のこだわりがあり、ホテルのようにしたかったので、我がままを聞いてもらいました。多少でも遊べる費用を確保しておくことをお薦めします。
トイレ工事(5万円)
1Fと2Fの設置費用です。
電気工事(105万円)
電気の配線、コンセント、スイッチ、分電盤設置に関する工事です。予想以上に費用が高くてびっくりしましたが、照明器具をすべてシーリングライトに変更し、天井や階段壁に間接照明を設置したり、コンセントの追加など、大規模改修を行いましたので、これも仕方ないと思っています。
TVアンテナ工事(8万円)
BSアンテナなどの位置ををベランダから屋根に変更するための費用です。
外構工事・給排水工事(19万円)
主に庭の雑草を防ぐための砂利敷き、ポスト設置、立水栓を交換するための工事です。費用を抑えるため、地元の業者にお願いしました。一般的にハウスメーカー系の業者の場合、外構専門業者に外注をかけることになるため、自分で直接契約したほうが中間マージンを取られないので、お安くできます。ハウスメーカーも外構部分に関しては、個別に動くことをむしろ歓迎する動きでした。
腐食改修工事(20万円)
壁を剥がしてみたところ、風呂周りの壁が完全に腐食してボロボロになっていることがわかりました。基礎部分も土だったので、今回、壁の補修と土台にコンクリートを流し込む対応を行いました。どおりでここ数年、風呂場に小さなアリやカタツムリ、ナメクジが出現するなぁと思っていたのですが、これが原因だったのですね。
これは壁を剥がしてみないとはからないことなので、当初の見積もりにはふくまれていない工事になります。予想外の追加費用は痛いですが、手で触ると崩れるような壁の家に住んでいたかと思うと、今回のリノベーションで改修できてよかったと思っています。
工事費用はトータルで約1,200万円になりました。
コツコツと積み上げていくと結構いってしまうものですね。実はこれに諸経費として工事費の18%程度が自動で追加されたので、実際は1,400万円でした。
さらに材料費、設備機器・電化製品の費用、引越し・借住まい費用、登記費用、申請費用、そして、消費税が掛かってきます。
この1,400万円は最終的にfixした請求金額ですが、計画の初期段階で、先述の書籍を使って、私なりの見積表を作成していました。書籍に載っていたプランや単価を参考にしながら作成したので、自分の見積書と実際に業者から提示してもらった見積書で、それほど大きな乖離はなかったです。
ただ、雨どい交換工事、TVアンテナ工事、電気工事は、私の見積もりから落ちていました。腐食改修工事ももちろん入っていませんでしたが、こういったことを想定し、ある程度遊べる予算も含めて、資金に余裕を持たせた計画をしておいた方がいいと思いました。
自分で工事の見積を算出する際は、工事が及ぶ広さだったり、改修の内容だったり、ドアやサッシの数だったり、それぞれの工事によって算出の要素が異なりますので、以下のような情報を事前に集めておきましょう。
- 改修する家の基本情報(坪数、外壁や内壁の面積、屋根の面積など)
- 変更するサッシの数、設置するドアの数、パーティションの数、造作家具の数など
- 使用する材料や設備機器の単価や割引額
- 各工事の工法の種類とそれぞれの費用の比較
書籍やインターネット、メーカーのカタログ、ショールーム訪問などをうまく駆使しながら、情報を入手してみてください。
見積りの粒度は細かい方がいい。
業者から提示してもらう見積もりは、先のレベルの粒度が絶対に必要だと思います。XX工事一式 1,000万円 のようなトータルでしか表示されていない見積書もあるようですが、それだけで判断するのは危険です。
そして、設計の打ち合わせをするたびに、必ず見積もりの修正版をもらいましょう。私はexcelベースで見積表を作成していたので、毎回修正版を反映し、前回と今回でどの工事にいくらの変更が入っているかを確認していました。細かい部分ですが、削った筈の工事の見積もりが落ちてなかったこともあり、指摘することができました。こういった指摘をしていると、相手も次回から指摘を受けないように慎重に対応してくれるものです。
まとめ
工事費は大工さんの人件費です。これに、使用する建材の材料費が加わります。見積りを作成する時は、是非、この工事費と材料費は分けて考えることをお勧めします。
工事費は人件費ですから、その工事自体をやるか、あきらめるかくらいしか、費用調整する選択肢はありません。我が家の場合、屋根の完全取り替えをやめ、カバー工法にして工事費を抑えたりしました。
逆に材料費は使用する材料の質、たとえば、フローリングであれば、無垢材を使用するのと合板を使用するのではコストにかなりの開きがありますし、内装も、珪藻材や石を使用するのとクロス壁紙では全然違ってきます。
リノベーションの目的によってどこに重きを置くか変わってきますが、あれもこれもと欲張るとすぐに費用に跳ね返りますので、私も取捨選択と葛藤の繰り返しでした。笑
次回は、『リノベーションの期間とマイルストーン』について、書いてみようと思います。
See you next !!