川崎殺傷事件が起きたあと、ネットでこんなニュースを見ました。
『逃げたり、大声を出そう 川崎市児童殺傷事件受け 小学校で対処法指導』
【岡山・津山市】
はっきり言っておきます。
1日の指導だけで、逃げたり、大声を出すことは不可能です。
非日常的な恐怖に直面した時、
子供たちが危険から逃げるには日頃からの訓練が必要です。
考えてみてください。
目の前で刃物を持った男が次々に人を襲っているシーンに遭遇したら、大人だって恐怖で動けなくなりますよ。
今回の犯行時間は10数秒だと言われています。
「わずか10数秒」ですが、実際にカウントしてみると意外と長いことがわかります。
体が自由に動けば、逃げられた子もいたでしょう。
しかし、それが出来なかった…。
その異様な光景に、犯人に気を囚われてしまった。という表現が正しいかもしれません。
もう一度、言いますが、あのような危険から子供たちが逃げるには訓練が必要です。
武道を習わせることで、ある程度の危機回避能力は備わるでしょうか?
私はそうは思いません。
武道を習うことはいいことですが、どうしても殴る、蹴る、投げるなどの技術の習得に目が行きがちで、逃げる訓練はほとんど行いません。
それは合気道も同じです。
肉体的にも精神的にも未成熟な子供が、大人を相手にして、かなう訳がないのです。
子供たちには、自分の身を守ることから教えるべきだと思うのです。
まず、どのような状況でも呼吸ができること。
これを繰り返し、繰り返し、練習してほしい。
呼吸ができれば、体が動くようになります。
ボクサーがパンチを打つ時に、意識的に「シュッ!」と声を出すのは、息を吐くことで体の力を抜くのです。
相手のカウンターを避けるために。
体が動けば、安全な位置に逃げることができます。
次に『安全な位置』を学ばせます。
相手が攻撃できない、もしくは、攻撃されても致命傷にならない位置はどこか。
意識することなく、安全な位置に動けるまで訓練します。
安全な位置を確保できるようになったら、大声で助けを求める訓練です。
声を出すには、息を強く吐く練習が必要です。
このプロセスを何度も何度も繰り返すと、無意識にできるようになっていきます。
その域まで達して、ようやく実践で使えるかどうかといったところでしょう。
正直、私自身、刃物をもった狂気の沙汰を前に対処できるかわかりません。
しかし、少しでも生きる確率が上がるのであれば、子供たちに逃げる技術を学ばせたいと思っています。
私にも小学生の息子と幼稚園の娘がいます。
二人には水泳を習わせています。
それは、万が一溺れた時に、少しでも生きる確率を上げてほしいから。
親というのはそういうものだと思います。
同じ思いで、息子には合気道を習わせています。
逃げる技術を学ぶには、一番適した武道だと思ったからです。
娘にもいずれ習わせたいと思っています。
残念ながら、川崎殺傷事件のような事件が社会から根絶することはないでしょう。
それに引き替え、子供が成長するにつれ、自分が守ってあげられる時間は減っていきます。
親としてできることは、生きるための確率を上げてあげること。
あとは自分の力で壁を乗り越えてほしいと思っています。
少しでも多くの子供たちが、危険を回避できる技術を身に付けてほしいと願うばかりです。